チップレット集積技術の最新動向

人工知能(Artificial Intelligence: AI)やメタバースといった膨大な情報処理・蓄積が必要アプリケーションに対し、ムーアの法則の鈍化やフォン・ノイマンボトルネックといった従来の半導体集積回路(Integrated Circuit: IC)やその実装技術、つまり集積規模や統合密度の限界がボトルネックになりつつある。これに対し、ICチップ間の接続帯域を維持したまま、異なる製造方法や機能・構造のチップを多数集積することで最適かつスケーラブルに能力を拡張できる可能性があるチップレット集積技術は、このような課題を解決する有力な手法として注目されている。また、昨今は前記の先端アプリケーションだけでなく、自動車・産業・コンシューマを含む一般的な用途での市場が出てきている。東工大、阪大、東北大を中心としたチップレット集積プラットフォーム・コンソーシアムでは、チップ/ブリッジ集積の最小限構成としてPillar-Suspended Bridge (PSB) 構造やそのコンセプトをMetaIC (Integrated Circuit of the Integrated Circuits) として提案、産業化に向けた活動を行っている。本講演ではチップレット集積の背景となる技術の歴史を振り返りつつ、今世紀に入って急速な進捗が見られる本分野の動向と最新の状況を説明、コンソーシアムでのチップレット集積基盤、3D集積、光集積を含む研究開発活動を紹介する。

東京科学大学 栗田 洋一郎氏
東京科学大学
科学技術創成研究院
特任教授
栗田 洋一郎 (クリタ ヨウイチロウ)